有為な人材

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「社会に有為な人材を送り出し・・・・」という一節が教育業界ではしばしば使われる。
さて、芸術方面で、そのような発言ができるかどうか?男子卒業生が30歳を迎え、そろそろ暮らしが固まる時期だがなかなか良い話は聞かない。もちろん今は女の子だって花嫁修業で来ているものはいないけど、このご時世だから手堅い就職から結婚という一昔前の図式をたどれることも少なくなった。
この地域で美術関連の仕事は以前よりも難しくなっていて、過酷な職場環境ですぐに辞めていく。
とまあ、悲観的な材料ばかりなので、いつものように「もう駄目だ・・」と言いたくなるが、明日はオープンキャンパス。普通なら夢と希望を語らねばならないところだ。しかし、保護者や教師の反対を押し切って、この道を選ぼうとする諸君が相手だから、安定した収入の可能性をちらつかせる必要はない。わずかな時間だが、好きなことに全力を投入して燃焼することで得られるものについて語りたい。
それでも、やっぱり「将来」については後ろめたいところがある。
とくに絵画や彫刻は「教える」こと以外では社会との接点を持ちにくい。理念的・基礎的なもので、デザインや工芸のように明快な実用性がなく、これで幸せになる人も少ない。こんな世界への進路を支持する人はまずいないだろう。それでもやりたいという人間が絶えないのは、線を引いたり形を作ることが人間の根源的な欲求だからだ。
この「根源的な欲求」については、クールに考えてみなければならないな。
現代は何もかもが経済的なファクターで決定され、数字に振り回されているが、その背後には原始から変わらないものが蠢いているはずだ。生きるというのは、もっとシンプルで生々しいものだろう。