傾く街、沈む街

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3度目のイタリアだけどベネチアは初めてだ。
これほどうんざりするほどの写真、映像で紹介されていても、実際に歩いてみると(当然のことだけど)ぜんぜん違う。仮想現実というけれど、現実感は人によって違うし、周囲は人ごみ、騒音などであまりに何でもなくて観光スポットを通り過ぎてしまうことも再々だ。たっぷりと演出された写真で見ていた光景に出会うことは滅多にない。
寝ぼけまなこの素顔の美女みたいに、サンマルコ広場やリアルト橋はそれほどのものとは思われなかったけれど、写真モデルとしては最高の街であることは間違いない。
それよりもまず、もつれたスパゲティのように入り組んだ狭い路地を歩くのはとても楽しいものだった。
ただ、このもつれかたは相当なもので、地図上に現在地を爪で押さえながら歩みを進めてもすぐにわからなくなる。おまけに地図も正確ではない。
加えて冬の高い潮位の時期に当たっていて、長靴がないと通れない箇所があちこちに出現する。
ホテルから出ると3方向のうちひとつしか通れなかったが、この迷路を迂回して目的地に辿り着くのは至難の業だ。少し大きな通りは(写真下のように)満潮になると高下駄のような台がセットされる。

ベネチアを何度か訪れている参加者のグループ(教員+女房など)はパドヴァへジオットを見に行ったので、この街はひとりで歩き回った。
写真にあるように街のあちこちにある寺院の鐘楼がかなり傾いている。サンマルコの大きな鐘楼も100年前に突然崩壊してすぐに再建されているが、これらもいつ倒れるかわからない。

目的のジョルジョーネが御不在のアカデミア美術館ではどんよりした油絵にウンザリさせられ、安藤忠雄の設計した現代美術展示施設へ。村上隆とチャップマン兄弟以外は建築に負けていたし、半円形の窓から見えるベネチアの景観はすべてに勝っていた。

ベネチアといえば赤毛の司祭ヴィヴァルディ。観光客向けなのだろうけど、その夜に2箇所でコンサートが開かれていたので、パンフの演目から弦楽八重奏団を選んで聴きにいく。
ヴィヴァルディを中心にチマローザとバッハ。イタリア人の運転のようにピシッと止まりズバッと加速するなかなかのドライブ感で、悦楽の90分。
外へ出たらまた満潮になっていてあちこちから水が上がってくる。もう少し遅かったらホテルに戻れなかった。ま、裸足になればいいんだけどね。

それにしてもベネチア、このシーズンオフでも賑わっている。イタリアは世界中からの観光客を吸い込む巨大な賽銭箱だ。