記憶 蒸気機関車

僕の定点観察ポイントからの至近距離に山陰線があり、待避線では蒸気機関車が出番を待っていた。
蒸気がシリンダーを前後に動かし、巨大な動輪が回転を始める。そんな光景を眼の前で見た。それだけではない。
時には運転席に招待されて、石炭をボイラーに放り込んだり、操縦方法を教えてもらったりしたこともある。
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記憶を頼りに描いてみたが、ほぼ正確に再現できていると思う。

こういう体験もあったから、憧れの職業はもちろん機関士だったが、蒸気機関車ではなくて電気機関車の運転士だった。その理由は前方視界がとても小さかったことだ。
構造上、仕方ないことなのだが、申し訳程度に付けられた縦長の窓から覗き見るように前方を確認するなんてことは納得できるものではなかった。
潜水艦に窓がないことや、リンドバーグが大西洋を横断したスピリット オブ セントルイスのフロントがガラスでなくて鉄板だったことにも大いに不満だったな。

しかし、新幹線の運転席を見た途端に、機関士への憧れは消えた。
シンプルなレバーが二つだけ、なんと二つしかない!何か間違っているのじゃないか?これでは操縦席とは言えない。
あれから五十年、ボタンが少し在るだけのiーpadでこの文章を書き、プリウスに乗っている。