フレデリック・バックいまさらですが・・

日赤での定期診断のあと、ふらっと県立美術館へ。フレデリック・バック展。
全国ツアーの最終。ジブリのバックアップ。
職員証でフリーだし、こういう業界のハシクレとして、まあ、見ておこうかという気分だったのだが
しかし、初期のドローイングを見てビックリ。
ものすごく、うまい!
特にコンテを使った素早い風景素描が冴えていて、明快な量感表現と正確な形態描写が程よく釣り合ったグアッシュがたくさん展示されている。この20歳代の習作が彼の作品を支えることになる。
アニメーションでは、まず何を学ぶべきか、何を教えるべきか、その明確な回答がここにある。

美術・絵画の価値基準が描画力よりもオリジナリティに傾斜した現代では、「絵がうまい」ことが即、評価につながらない。
(これは石膏デッサンみたいなトレーニングによる技術の話でなくて、先天的に与えられている描写力のことです。)
人口の1パーセントぐらいには、苦もなく形を描ける人が居て、昔はこういう人が美術の仕事に就いていたのだろうけど、いまはむしろ歪める能力が求められるから再現力が却って足枷になったりする。
美術学校では(絵画ですが)ほとんど技術的な指導をしない。とにかく勝手にやってくださいということで、工芸分野だと卒業制作は成長の成果として納得できるものが多いけれど、表現系では4年も何をしていたのかなという情けないものがほとんどだ。
こういう経験をしてきているので、このバックさんのように、若い時代の堅実な作品がテレビの仕事、アニメーションと形を変えながら結実していくという成長と発展の記録を見て感心したのだった。
それも70歳まで一直線に。
3DのCGでもルネサンス時代の人体表現力が大いに活かされるのだが、こういう基本的な美術力がストレートに通用する世界は映像だけになっている。
そのことは理解しているつもりだったけど、はっきりと、たっぷりの作品展示で見せつけられると、これは衝撃です。
再訪して、もう一度考えてみないといけませんな。