霧雨の周防灘は波静かでグレー一色の世界。「乳の海」というタイトルの著者を思い出そうとしているうちに、ふうっと眠りに落ちる。
朝5時前に高速に入った頃から降り始めた雨は一日続いた。
国東のお寺巡りだから雨も悪くない。
両子寺の参道。モミジの名所だが寺は見るべきものなし。
いずれの寺も人影まばら。
富貴寺阿弥陀堂。端正なプロポーションはさすがに国宝。しかし雨天は湿気を防ぐために内部の拝観は中止に。日野法界寺との比較を楽しみにしていたのに残念だった。
それでもすぐ近くの真木大堂の仏像群が予想以上に素晴らしく不満は相殺された。
車の旅なので雨も風情と余裕だったが、摩崖仏へのアプローチは厳しかった。
擦れ違った老人グループは全員登山靴だったし、外国人のグループも軽快なスポーツウェアで備えていた。
我々も登山靴とストックを準備していたが、傘をさして滑りやすい石の道の上り下りは緊張させられる。
簡単には拝めないのも価値のひとつだ。
登り口にある胎蔵寺は、図書館で借りた50年前のガイドブックでは国東唯一の茅葺の寺院として素朴の代表扱いだったが、トタンで覆われ、仏像は銀色の「お願いシール」が貼り付けられてポップなオブジェに変身していた。
改装中で格安の別府の宿では至近にある名物温泉へ。夕食の海鮮食堂など今回の旅ではマンガ「仏像に恋して」を大いに参考にさせてもらった。
国東の史跡を簡潔的確に解説していて、これは信用できると思われたのだ。
韓国人の2グループに挟まれて気分は慶州の裏町だった。付近では客引きのオッサンが立って、40分1万5千円で「いいこと」をアピールしている。別府は古い温泉街だ。