冬の散歩

街に出た。

十数年前までは街にレコードショップがあり、映画館、書店やデパート、ハンズに無印と歩き回って楽しめたものだが、今は郊外のイオンモールで事足りている。

けれども充足しているのではない。何が欠けているのか?

今日のアクセスは自転車。車に乗るとショッピングモールだけど、電車や歩き、自転車なら街に向かう。

12月なのに異様に暖かい。しかし薄着では寒々する。薄手の衣類を重ね着して対応。

風邪が流行るのはこんなことも原因しているのかもしれない。

道中の風景は黄褐色のバリエーション。傾いた冬の日差しが作る陰影でいっそう黄色が美しくなる。

知人に本を渡して雑談した後、広島城の中を回る。学生を連れてスケッチに来ていた40年前と風景はほとんど変わっていない。あの頃と同じ絵が描ける広島では珍しい場所だろう。

揚げ物を買って川岸で食べて、スケッチ。

雲ひとつない快晴の暖かな陽射しにうたた寝して筆を落とす。命も落とせば幸福な老人の昇天になる。

横川の小さな画廊で若い人たちと話しながら、M先生を思い出していた。

美術館長をされながら芸術学の講義を担当してもらっていた方で、退職後は若ぶりなファッションであちこちのアートイベントに一愛好家として参加されていた。

いま、どうされているのかな?自分の行動がMさんに重なる。

ペダルを漕ぎながらずっとジャズを聴いていた。

イアフォンをつけて自転車を漕ぐと違反になるらしい。ヘルメットとか細かな規制ばかりが増えて首を絞め合っている間に、大きな犯罪が身を膨らませている。

鮮やかな陰影。

子供の頃に見た桂川の並木が今も鮮明に浮かぶ。陰影が好きだ。

小学校4年の頃からピサロロートレックがどうこうとノートに書いていた。

あれから六十余年、洋画の道に進んだのは当然だったのかもしれない。