6万粁

目覚めたら窓の外が白かった。

朝食を取りながら天窓を見上げてふらふらと落ちてくる雪を眺める。

今日は家にこもって静かな一日を過ごすのかな?

と思っていたら明るくなり、薄日も差してきた。慌てて連絡を取り合い、テニスコートに集合となる。

かなり気温が低いので手袋二重にしてダウンのロングコートを着たままで、さあ、始めようかとしたら雪が激しくなった。ボールが見えない、弾まない。酔狂もいいところだが、それでもプレーを続けていたら止んできた。

4試合して全勝。俺の基本形はスライスだから打球が滑ってポイントになったのだ。たまにはこういうことがあってもいい。

車の走行距離が6万キロになった。

毎年1万キロ、毎日30km近く走っていることになる。

こじんまりした古都に育った俺には驚きの数字だ。

移動手段が徒歩だった100年前、行商人はそれ以上歩いていたし、マルコ・ポーロベネチアから北京まで往復したのも基本は歩きだったろう。ましてや車、アメリカ人にとっての100kmは直ぐ近くだ。

午後、きょうもネットで映画を見る。

空々しいほどに希望と善意に満ちた平和で安定した世界。それを描けた50年代は良い時代だったんだ。この映画を終了30分前ぐらいに止めて、これからどう結末に持っていくのかを想像してみた。

完全に予想は覆される。

今だったら修復できないような亀裂やすれ違いが易々とほぐされて行き明るい明日を暗示して大団円。

みんな、こうであってほしいものです。