法隆寺

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奈良と言えばシルクロードというぐらいに遠いギリシャへのつながりが語られる。特に法隆寺の回廊は柱の形がエンタシスに通じていて、明らかにシルクロードを通って伝わったものだと言われる。
そして俺の大嫌いな言葉「ロマン」だ。
この言葉が出てきたらイカサマを疑った方がいい。

ということで帰って早々に図書館へ行って井上章一著「法隆寺への精神史」を借りた。
前から気になっていたのだが絶版になっていて、大学図書館の地下から拾い上げてもらう。
結論から言うと、ギリシャから伝播したものかどうかは証拠が無いので、白黒は付けられない。
それよりもエンタシスを巡る解釈の変遷がとてもおもしろい。
エンタシスを主張した大将格は建築家の伊東忠太
この人は実家の近く、本願寺の伝道院を設計している。前にもここに書いたけど俺は小学校のときにここを描いている。突然にアラビアンナイト、奇妙だけど魅力的。
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東京の築地本願寺も設計していてエスニックの代表みたいな建築家だ。彼の名を知ったのは最近だがとても昔からの知り合いに思える。もちろんフェノロサ岡倉天心らも論争や解釈の中核に居て、その経緯やしがらみを井上章一は解き明かしていく。いつものように綿密な調査で結ぼれを解きほぐしていく手腕が快い。
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金堂と塔が併置されている配置、この伽藍配置というものの重要性も理解できていなかったが、それもこの本で納得できた。
極東という地理的要因、世界史の絡まり。西欧へのコンプレックスやアジア諸国との関係など、流動する時代に引きづられながら解釈が変化していく。
その表舞台が法隆寺だったのだ。
何故か堅くて安らげず落ち着かないと感じていたが、あれほどグジャグジャ注釈を付けられたら空気もこわばるだろう。
かなり胸のつかえがすっきりした。さあ、制作を再開しよう。