またまた上野公園

イメージ 1

芸大美術館を出てすぐに木造洋館建ての旧奏楽堂があり、300円を払ったことが悔やまれるほどのショボイ展示をみて2階への階段を上がるとホールからハープシコードの音が聞こえてきた。
ホールには誰もいない。
ステージの中央に、ジーパンにセーター姿で髪をきれいにまとめた、いかにも音大生という感じの美少女(多分、まちがいなく)がバッハを弾いている。
足音を殺しそっと椅子に腰掛けて耳を傾ける。
ポピュラーと言ってもいいほどよく知られたフレーズ。

コロニアル風の内装は豪華というより堅実で、ビクトリア風のカーテンが丁寧に架けられている。
華美ではないが凝った作りのシャンデリアが輝いて天井の装飾を照らす。
ステージ背後の壁面に埋め込まれたパイプオルガン。
快いバッハを奏でる美しい演奏者。

まるで映画の1シーンのようだ。

唯一の観客である俺の姿は、Pコートにジーパン、ワッチ帽を被って黄色いバッグを担いで、ほとんど放浪者。
物悲しいストーリーになるな。

しばらくして入ってきた若者が腰を下ろして静かに聴き入っている。
彼なら恋物語が生まれそうだ。
好き勝手なことを想像し、あちらこちらを眺める。

演奏を聴きながらこれほど眼を楽しませたことは(国内では)無かったな。
静かに拝聴するというマナーの背景には、それだけの舞台が必要だ。
近代建築の中で義理で来ているオッサンの横でバートーベンという経験ではクラシックファンも生まれまい。

ということで、ここしばらくクラシックから遠ざかっていたが、たまらなく聴きたくなっている。