悲しき雨音

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大雨警報が出た朝に出勤すると、研究室の天井から濁った水滴が落ちて床や周辺が汚れていた。
掃除のおばちゃんが新聞紙やバケツを持ってきてくれた。
ポトッポトッとバケツを叩く水音が部屋に響く。
「昔はこんなことがよくありましたねえ」と話す。
何とも情けない気分になったものだが、いまではそれが懐かしい。
雨漏りを知ってるか?と学生に尋ねる。もちろん誰も居ない。
「昔はみんな貧しかった」というよりも「雨漏りするような伝統的な旧家」に住んでるようなリッチな学生はいないという推論をしている自分にちょっと驚いたが、この音を知らないのは悲しいし貧しい。

古い記憶が甦る。記憶と言うよりも感覚かな?
もっと外界の音に耳を傾けていた。ほんの数十年前までは。今は遮断するのに懸命だ。
視覚のような目を閉じるという選択肢が無いからな。
「修理には少し時間がかかります。」と言う施設に「ゆっくりやってください。楽しんでますから」と答える。これが自分の家だったらこんな悠長なことは言ってられないだろうが、そこは作業場の気楽さと割り切れるから、この部屋が好きなんだな。