安東河回村へ

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前回、書き忘れていたことだが、ソウルの宮殿にはカッチというカササギの一種がたくさん居た。尻尾が長く、飛ぶと白と群青との美しい模様が広がる。国の鳥だそうです。
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さて、安東河回村についてはWEB上でたくさんの情報がある。10年前に比べるとずいぶん俗化しているようだ。4年前に訪れた上海周辺の水郷地帯のように、こちらも周辺から隔離された一種のテーマパークであるが、「園内」で日常生活が保たれている。その中を多くの観光客が歩き回るのだから落ち着けないだろうな。
お伽話に出てくる藁葺き(茅葺ではなく,ワラです)の家は初めて見た。これが貴族階級の瓦葺の家を囲んでいる。積み上げたワラを藁紐で押さえて固定するというものだから、かなり脆い。毎年の補修が必要で現代社会では費用がかさんで維持できないだろう。
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藁葺きが消滅したのも仕方ないが、独立後、貧農出身の大統領は藁葺き民家からの脱却をスローガンに奮闘したという。その時代を記憶する人も多いだろうけど、いつのまにかそれが貴重な「豊かさ」の象徴となって観光客が押し寄せる。しかし何故ここに残ったのか?
村内の名家はどこも姓が柳である。リュウ何某とかいう韓流スターがいるそうだが、まず柳宗悦が思い出された。今年の2月に日本民芸館に遭遇したことはこのBLOGにも書いた。柳宗悦は韓国の民芸もたくさん集めていて、深く印象に残っている。http://www.mingeikan.or.jp/home.html
ひょっとして親戚?と思って調べると、彼が韓国を敬い果敢に活動したことがあちこちに記されている。
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村は仮面劇でも有名で、土日の午後に公演が開かれる。激しいリズムでコミカルな仕草。観客に小便をかけまくった(もちろん水ですが)暴れ牛が撲殺されて解体という生々しくわかりやすい内容で爆笑の連続。しかし降雨で中断中止に。
満員の観客席から落胆の溜息。しかし激しい雨と雷で一同納得。
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予約した宿は集落を囲む河の対岸にあり、交通の不便さが気がかりだったが到着してみて、その懸念は一掃された。400年前に建造されたという学問所からは川の流れの向こうに村が一望できる。そこが我々の宿所だ。
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開け放たれた広い板の間に寝転がって山水を眺める。周囲の大木には鳥が群がり、リスが走る。本当に最高!
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建物の隣は芙蓉台という崖があり頂上から見る村の全貌から河回村という名称が納得できる。
Google Earth で「Hahoe」で検索すると村が見えます。)
もちろんテレビなんて無いから、夜は虫の声、鳥の鳴き声を聞いて過ごす。寝床は脇の小部屋で蚊帳が釣ってある!子どもの頃が懐かしく甦る。もちろん息子は初めてだ。彼は直前に新築アパートから修学院の古家に転居したばかりなので、400年前のシンプルライフに痛く感銘している。
電気虫除けが効いているのか、開け放しているのに全く蚊がこない。すごく涼しい。酷暑の日本から来れば天国だ。
宿のご主人が桃3個に包丁を載せたお盆を持ってきてくれる。幸福感倍増。
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宿帳に何か書いてくれと筆ペンを添えて渡される。B4サイズの和紙(韓紙というのだろうけど)を閉じたノートには、実に見事な書体でハングルが書かれ、慣れた筆さばきで植物や童画やシュールな絵が描かれている。
ここの宿泊客はどうしてこんなに絵が上手なんだ?
ペンで描きたい所だが筆から逃げるわけには行かないので、ここは動きの表現で対抗するしかないと、皆が寝静まったあとに緊張しながら筆を動かし、村で見た仮面劇のシーンや芙蓉台からの眺望をマンガ風に描いた。

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朝食は全員で頂く。宿泊は我々3人だけなので宿のご家族と懇談。
やはり韓国の日常的な朝食は、それほどギトギトでも極辛でもなく穏やか。すごくおいしい。
ハイティーンの娘さんが通訳。本とテレビドラマでの独学らしいが、すごくうまい。ここのHPはハングルだけだったので英語のメールで申し込んだら日本語で返答してくれた。全部それらは娘さんがやっているらしい。
HPには英語と日本語を載せるべきだというつもりだったが、日本の雑誌に載ったりしたら2度と泊まれなくなるぐらい予約が殺到するだろうから、やめたほうがいいかもね、なんてことを笑いながら話す。
玉淵精舎というところhttp://hahoehouse.co.kr/ おすすめ。
秋の景色もも素晴らしいでしょうね。

9時半からは安東へのバス、ソウルへの高速バス、ソウルからの空港バスと移動ばかり。
ソウルの渋滞と高層アパートの群立を車窓から見ながら、経済的成長の価値、得たもの、失ったものについて考える。どうしようもないけれど良い方向に向かっているとは思えない。どうにかしなければいけない時が来ている。
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漢江沿いの高速を走って、ほとんどすべてが人口の仁川に到着。
きょうの朝との落差、亀裂を抱えて酷熱の日本に帰ってまいりました。