思い出

子供の頃、50年近くも前に会って以来、顔をあわせなかった従兄弟が広島を訪ねてきた。
正真正銘のお坊ちゃまだったその人に会って、当時の印象が甦ったのだが、それはとてもささやかな断片とでも言うべきもので、例えば出迎えたときに彼らが乗ってきた特急の特等車のシートの模様とか、中華料理フルコースの最後に出たポテトのおいしさだとか・・・
そこでチューター授業のときに、子供の頃の何でもないつまらないことだけど忘れられない記憶を提出物の裏に書いてご覧と言ってみた。
これまでレポート類は嫌々読んでいたのだけど,今回は集中できた。
とても共感できるし、映画の細部に使ったら忘れられないシーンになるようなエピソードがたくさんあったからだ。文学だとも感じた。
小説を書きなさいという課題だったらこんなに感動的な文章は書かれなかっただろう。
本当に些細な出来事を通じて心から理解しあえること、それは信じられるものだ。
それが人生のリアリティなんだ。