いよいよ(やっとこさ)廃棄作業が始まる。来月には封鎖されるので、未練がましく目ぼしいものを探している。
このスケートボードは子供たちが大学の急坂で滑って遊んでいた。40年ほど前のことだ。その光景がありありと浮かぶ。捨てるべきかどうか?
このライトはもっと古い。学生時代から使っていた。グレーだったものを塗り直している。Zライトはスタジオの常備品というもので憧れの品だった。バネが緩んでしまってからも騙しだまし使ってきたが、もう限界だろう。
女房が若い時に絵の具箱と一緒に持ち歩いて、あちこちでスケッチした折りたたみ椅子。彼女はあまり昔の話をしないから、どんな青春時代を過ごしていたのか知らない。
この椅子に聞くか。
戯れにいろんな絵を描いた。木枠は学生に譲ってキャンバスは捨てる。
散乱したゴミのなかに見覚えのあるものが。授業で学生と一緒に描いた油絵。
まるで被災地のよう。
一番長く過ごした元洋画実習室。俺は何をしていたのだろう?と振り返る。
CGルーム。その前は学科の職員室。新コース設置に合わせて部屋の用途が変わった2006年に換気扇と天井ファンを独りで掃除した。長年にわたって蓄積した紫煙と酒宴の脂が厚くこびりついていた。
いよいよ、お別れだ。