カラバッジョ

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西洋画専攻だったから興味はあるけれど、脂っぽく黒ずんだ線香臭い油絵ばかり見ていると、どうでもいいという気分になるものだ。しかし、カラバッジョの絵はどれも新作映画の1シーンのように鮮烈で、強い光が当たっているというか、TV画面のように発光している。
構図は類なく斬新で、人物を際どい角度から短縮表現で描き出す。どこをみても苦労した跡が無く、一気に易々と描かれている。再現技術ということではカラバッジョに勝てる画家はいない。
ちょうど没後400年でローマの美術館では展覧会が開かれ、街の各所にポスターが溢れていたけど、最高の作品は教会の壁に貼り付いている。徒歩30分の圏内にあるサン・ルイジ・ディ・フランチェージ聖堂(3点)、サンタゴスティーノ聖堂(1点)、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会(2点)はいずれも無料で、これはローマに行かないと見られないから、当然、我々はこちらを見た。
どの教会でも小中学生の団体が列を成して歩いているのについていくと、必ずそこに行ける。やはり、大人気ですな。
撮影禁止とあっても皆バリバリとデジカメで撮りまくってる。(美術作品は寛容だけど子供を撮ろうとすると親が血相変えて制止しに来るので御注意)
どの絵も本当に映画みたいだが、実際にカラバッジョの劇的な生涯は何回も映画になっているし、彼の表現はライティングやカメラの人達の目標になっている。現代の映像表現がカラバッジョに追いつこうとしているので現代的に感じられるということだろう。
何十本というライトを制御してもカラバッジョの絵のような明暗を演出することが出来なかったという記事を読んだことがある。僕も昨年、3Dソフトで「聖マタイの殉教」を再構成してライティングを試みた。画面の人物が思ったより接近している。横から裏側から見てみる。等などルネサンス以降の絵画と3DのCGは同じ原理で作られているので違和感なく変換できる。カラバッジョの絵が動けば近未来の映画になるだろう。歴史がぐるりとひとまわりしたのだ。