ニューシネマパラダイス

このイタリア映画は、映画ファンならいっぱい納得できるシーンがあって、
印象的な主題曲とともに忘れられない名画になっているのだけど
このなかでの1シーンで
老映写技師(フランスの名優フィリップ・ノワレ)が進学で町を出て行く少年に語る言葉、
「何があっても帰ってくるのじゃないぞ」
これがずっと気になっている。

イタリアといえば故郷、地域の求心力が強くて、中央集権的な傾向が少なく、都で錦を飾るというような馬鹿げた野望とは無縁なところと勝手に思い込んでいた。
マンマミーア、お母さんが作り出す母系性親族のなかで昔ながらに生き続けるのがイタリアの理想なのかと。

僕の3人の息子のうち二人は東京と京都で職を得ていて、彼らには故郷に帰るという意識はまったく無いようだ。我々夫婦がこの地の生まれ育ちではないこともあって、非地域密着型で暮らしてきたから、それは当然のことだろう。
でも、こういうのは典型的な幸福観とは相反するらしい。
なんと言っても家族は共にあってこそと今も一般的には考えられている。
まあ、そりゃそうだろう。
しかし、それを実現できる人はごくわずか。最も必要としていて、それが成り立ち得るはずのところで不可能になっている。
田舎に行くほどに老人ばかり。
その寂しさが俺にも次第に体感できるようになってきた。
日本各地でこんなことが戦後何十年と続いたのだ。

数値データ以上に、老齢化の影響は大きい。
何かと変化の多い時期、薄ら寒い大陸的な空を見ながら感じたこと。