小出楢重の随筆が面白かったから画集も見ておこうと取り寄せたら、安井曾太郎とセットの大型本だった。1970年代に出版された「現代日本美術全集」に収録されている人は明治大正生まればかりだ。

アメリカンアートに浸かっていた俺は広島に来て、こういう「古臭い」洋画に遭遇してたじろいだ。それからずっと今まで見向きもしなかったが、退職してから近辺をスケッチしたりしていると見方が変わってきた。

「なかなかいいじゃないか」と思う。細密なリアリズムにウンザリさせられていたから要を得た省略はかっこいいいなと感じる。それが日本人の得意技であることを小出楢重が書いていたが、この安井曾太郎は京都中京、木綿問屋のぼんぼんで、朋友の梅原龍三郎も下京の染め屋の息子だったことを初めて知った。

なるほど生まれながらにして文人趣味に囲まれていたのだ。20世紀初頭に船旅でパリに遊学できる財力にも支えられていた。

何代にも渡って蓄積された京都商家の財力地力は、なかなかに凄いものだということは(下層階級の)俺でも知っている。文化とはそういうものだ。

蛍光灯の買い替えで余ったシェードが2階の器具と同じだから、戯れに白く塗って色紙を貼ってみた。

極彩色に塗りまくるつもりだったが古風な家に合わせて60年代風モダン路線を試みる。

というか、そうなってしまうところが生まれ育ちの恐ろしさだな。

坂口恭平の画集「Pastel」も図書館から借りた。

スマホで撮った身辺の光景をパステルで描いている。本人が感じたことがストレートに伝わる。絵はこうでなくっちゃいかん。

建築を学んだ人だからスケッチはたくさんしているだろうけど、うまい。