東京美術研修旅行

恵比寿の写真美術館

「イメージ・メイキングを分解する」という奇妙なタイトルの展示を最初に見た。

https://topmuseum.jp/upload/3/4276/ReinventingImageMakingFlyer.pdf

映像は訴求力が弱い。映画館のような装置や導入が必要なのだ。立体は小さなものでも「あれ?変なものが」とアピールしてくる。そんなことを考えた。

木本圭子のコーナー、僕より10歳ぐらい下なのかな?美大を出て、ずっとプログラミングで制作されている。始めた時期は同じくらいだが遥か彼方に。最近、もう一度プログラミングで映像を作りたいと思っていたので、いろいろ考えさせられた。

クリスタルガラスに3D刻印という技法はネットで注文できるほどポピュラーになっているものらしい。

メインの展示をしていたタマシュ ヴァリツキー。1959年生まれだから若くない。

1980年代のパソコン普及が与えた美術の変化。僕もそこに居た。

 

そして同館別室で「メメント・モリと写真」

メメントモリと言えば藤原新也であり、彼の気合のこもった文章とインド放浪の写真が展示の主軸になっていた。

僕は20歳代後半から、たくさんの写真を撮り現像、焼き付けをしていた。今もたくさんのネガを保存している。

そして写真史の教材として最高の顔ぶれが並ぶ。人間をモチーフにする強さ。

六本木の森美術館

当初、女房の好みに合わせて「アリス へんてこりんな世界」を見るつもりだったが、映像装置が壊れて展示できないとのこと。そこで

「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」へ

ヴォルフガング・ライプ《ヘーゼルナッツの花粉》

https://www.flickr.com/photos/moriartmuseum/albums/72177720301171224

出品している多くの作家の中に、ロベール・クートラスがあって、以前からこの人の作品を見てみたかった。

中世の石工のような暮らしの中で、小さな木片に錬金術的なイメージを描いて極貧の中で亡くなった。現代美術展のなかでそれを見る。

バリバリのコンセプチュアルアートとプリミティブな表現が並ぶ。もちろん素朴が僕の好みだ。

青野文昭 ユニークでわかりやすい。仙台の人だから大震災と重なる。

そしてびっくりしたのが

金崎将司 チラシをボンドで重ねて立体にしている。障害者施設で途方もない時間と集中で制作した。邪念のない表現行為に心打たれるが、総じて色彩感覚が素晴らしいのは何故だろう?と常に感じている。今回は立体の存在感、迫力に圧倒された。

日本最多の出品回数記録保持者?堀尾貞治。もう亡くなったけどいつも神戸で発表していて、関西で堀尾といえばこの人だった。作品を見るのは初めて。

多彩な展示でくたびれて屋上に上がる。

昨日、はとバスで回ったルートが眼下で確認できる。何度もきた森ビルだが屋上は初めてだ。帽子やカバンは持っていけない。

美術館にはこういう息抜き空間が必須だ。表現に付き合うのは疲れる。

 

竹橋 近代美術館「ゲルハルト・リヒター展」

学生の頃、フォトリアリズムが流行していた。その頃、リヒターは独特のボカシ技法で知られていたが誰にも真似できない技術だった。

後に大学教授になってからのリヒターは乱暴な抽象に挑んだりで理解できなかった。

それがまとめてやってくるのだから是非見なければと期待していた。

細密な筆で克明に描くリアリズムなら、根気と努力で描けるが、全く線を使わない明暗だけでしかもブレてボケている。眼を近づけてみてもサラッと刷毛で描いたようだ。

形はプロジェクター投影だろうけど、絵の具を塗る手順は想像できない。

ポスターに使われた少女像は小さなものだが、これが選ばれた理由で日本におけるリヒターのポジションがわかる。抽象では観客が呼び込めない。超絶技巧が1番の売りだが、上の画像のようなボケブレでは眼を引けない。となるとこれしかない。

平日の午前から観客は多かった。

乱暴な抽象画が36億円で売買されたことも話題になった作家だ。

今回、一番惹きつけられた作品群。90歳になってから毎日一枚描いている鉛筆画。

絶妙の明暗で素晴らしい。これが見られて良かった。

休憩室からは皇居と丸の内が一望できる。水平垂直が並んで不気味だ。

この近代美術館の常設はまったく美術教科書の現物が並ぶ充実。萬鉄五郎が良い。

リヒターよりも時間をかけて見てくたくたに。

レストランは予約で満杯なので隣の毎日新聞地下の昭和な食堂街でカレー。その味も女給さんも50年のタイムスリップ。

美術鑑賞はほんとうに疲れるものだ。4日間でこれだけ見てもう飽和。皇居沿いに歩いて東京駅で酒と弁当を買い、新幹線。

小田原あたりから富士山のシルエットが拝めた。

3年前まではこの時期に出張や学生引率で再々東京に来ていたから、そんなリズムが蘇ったようだ。ちょっとの期間はハイな気分で過ごせそうだ。