澱んだ水

700kmも遠くの台風が想像以上に強かった。

女房は京都の孫のピアノ発表会に行く予定だったがJRチケットをキャンセル。

慎重な対応のつもりだったが当日は広島も風が強く、在来線の一部は止まっていた。

入試も急遽2時間遅らせることになる。

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実習室が移動した2号館から廃墟になった3号館を眺めた。

意外に大きい。

俺が赴任した昔は半分ぐらいの部屋で授業をしていた。時代とともに学生が増えてコースも増えて教員も増えて、部屋も拡がって美術がほとんどを占有するようになる。

近年、学生が減少して最盛期の半数近くなったが、部屋数は変わらなかった。

こうして外から眺めていると、ずいぶん贅沢をしていたものだと感じる。

不公平で非効率だと考える人が居ても当然だろう。

引っ越しで不要物が整理されて実習室がスッキリした。これはメリットだったな。自分の家でも昔の写真を見るとモノが少なくてスッキリしているが、今は本棚や雑品で壁が見えない。老人のゴミ屋敷。

それと同じことが職場でも起こっていた。人の常だが外圧がないと改善できない。

 

学生時代、日本画の教授だった秋野不矩さんは自宅が全焼した時に、「清々しました」と言って周りの人を感心させた。

いろいろ溜め込んだ老人になって、その言葉の重さ、身の軽さを想う。

窓辺で3号館を眺めながら「澱んだ水は腐る」というレオナルドの言葉を思い出していた。